ひろかわさえこの絵本とそれから・・・


by pukuminn

カテゴリ:好きな本( 3 )

五月晴れの空も、9月10月の秋晴れの空も、12月の冷たい空も
どれも青い空に変わりはないのに、
8月の晴れわたった空が、深い悲しさを呼び起こすのは
どうしても心の中で、戦争と結びついてしまうから。
もちろん、原爆の朝の空も、戦闘機が飛び交う空も、敗戦の日の空も
私が見たわけではない。文字で、映像で,語られて来たものが染み付いている。

f0269910_17522209.jpg

越水利江子さんの「ガラスの梨 ちいやんの戦争」(ポプラ社)を読みました。
ちいやんと呼ばれる女の子の目を通して
戦時下のつつましい暮らし、肉親を失う悲しみ、否応無しに戦争の災禍に巻き込まれる
人びとがリアルに描かれています。
人だけではありません。戦争などというものには全く無関係な動物たちも、賑わっていた町も、
そこここにあった思い出も、みんな燃えてしまいます。
越水利江子さんは、昨夏の京都で、小澤俊夫さんの講演会の打ち上げでお会いしましたが
ほぼ,私と同じ世代の方なのに、どうやってこのリアルさが描けたのか?
綿密な歴史考証と想像力、どれだけこの物語に入り込んで描かれたかと思うと
私まで胸が苦しくなりました。
ちいやんは、越水さんのお母様がモデルとのこと。
お母様に伝えられたことを、越水さんはどんなに苦しくても
描かずには居られなかったのだと思います。

70年前の戦争で、まったく傷つかなかった家族は、日本に無いのではないでしょうか?
私の母も次兄を満州の戦場で亡くし、画家だった長兄は東京の空襲で大やけどをおいました。
まだ二十歳そこそこの娘が、男手の無い中、真っ黒になって家業の酒屋を手伝ったそうです。
今、また戦争好きな輩が蠢いているような気配がします。
私たち戦争が終わって生まれた世代が、次の世代に向けて
「平和というものは、努力無しでは守れない」という事を
どうやって伝えて行くか?
青い空を見上げても答は書いてないのです。




by pukuminn | 2018-08-21 18:37 | 好きな本

WONDER

今年の桜は,あっという間。もう散り始めたらしいですね。
私にしては,めずらしく分厚い本を読みました。
と言っても、児童文学なので字は少し大きめ。
このくらいの字を読む方が楽になったのは年のせいです。
毎晩、ふとんに入ってから少しずつ、そして昨夜は一気に最後まで。
読み終わったら朝になっていました。
真夜中に何にも邪魔されずに本に没頭する…
こういう贅沢は、そうそう出来ないけれど。

f0269910_00513821.jpg

2月の「絵本の会」で、翻訳者の中井はるのさんから紹介が有ったのがこの本「WONDER」です。
著者はアメリカの人ですが、世界中で翻訳され600万部のベストセラーとか。
実は、児童文学畑には詳しくないので、ぜんぜん知らなかったのです。
下顎顔面異骨症という顔に障害をもつ少年オーガストの物語が、
本人と姉や友人たちの独白の形で進行していきます。

それぞれの立場、それぞれの気持ち、読み進むうちにいろんな想いが蘇って来ました。
自分の中に潜在的に眠っている差別、優越感、恐れ。
そして共感と後悔、ずしりと来ることばの重さ。
ベトナムの戦争証跡博物館で枯れ葉剤による自分たちの障害を展示物として人前に立っていた人達、
ツーヅー病院の平和村の障害をかかえた子どもたち、そして先日の日赤乳児院の子どもたちのことも、
くりかえし思い起こされました。
特に日本では、障害を持って生きる人達が社会から隔離され、
日常の中で目隠しされて、私たちには見えなくなっていることが多いように思います。

この本には、障害をもって生きるという事の厳しいリアルが描かれていますが、
気がつけば両腕いっぱいに人間への信頼を受け取り、胸がいっぱいになっていました。

十代の人に、そして大人にも、多くの人に出会って欲しい一冊だと思います。



by pukuminn | 2018-03-30 02:27 | 好きな本

さよならのあとで

12月になりました。
めっきり,冬ですね。

この時季になると、喪中はがきがぽつぽつと届いてきます。
今年は私が書いていました。
10月に5歳上の姉が亡くなりました。
考えてみると、姉は18歳で実家を離れているので
しっかり同じ屋根の下で暮らしたのは、たった13年…
それっぽっちしか,無かったのか、と思います。
でも、生まれた時からいるのが当たり前だったひとですから
日々、姉のいなくなった世界の穴が,大きくなっていくように感じます。

姉を空に送ったその夜に、部屋でぼーっとしていたら
机の横に積み重ねていた本の中から
ふいにこの本が私の手の中にやってきたのです。
本当に、見えない力が働いたような不思議なタイミングで。
数ヶ月前に、どこかで紹介されていて購入し、さっと読んで置いておいた本でしたが
勿論、初見の時も良い本だと思ったのですが、
でも、その時とはまったく違う言葉になったかのように、
私の心の中に入ってきました。
「さよならのあとで」

f0269910_23462229.jpeg
まるで、息をしているような本です。

後書きを除けば、たった42行の言葉が、
ゆっくりとゆっくりと、語られて行きます。
今、この時に
一欠片の押し付けがましさも無く
静かにこころに寄り添ってくれるのです。

この美しい本を創った、ひとり出版社の夏葉社さんと、
野の花のようなつつましく優しい挿画を書かれた高橋和枝さんに
ありがとう、を言いたいと思います。
高橋さんは、もうずいぶん前からのお知り合いで
素敵な絵本を描かれる方です。

夏葉社さんのホームページに
「何度も、読み返される本を。」とあります。
そのとおりに、何度もこの本を開くと思います。
次に開くときは、また違った言葉に出会うでしょう。
もちろん、言葉はかわりません。
そこにいる私が、今とはちがっているからです。
本は、うけとめる側によっても創られるものだと思います。
絵本もです。

こだわりの、ひとり出版社さん
応援したいですね。

f0269910_23464418.jpeg

by pukuminn | 2017-12-02 03:46 | 好きな本