ガラスの梨 ちいやんの戦争
2018年 08月 21日
五月晴れの空も、9月10月の秋晴れの空も、12月の冷たい空も
どれも青い空に変わりはないのに、
8月の晴れわたった空が、深い悲しさを呼び起こすのは
どうしても心の中で、戦争と結びついてしまうから。
もちろん、原爆の朝の空も、戦闘機が飛び交う空も、敗戦の日の空も
私が見たわけではない。文字で、映像で,語られて来たものが染み付いている。
越水利江子さんの「ガラスの梨 ちいやんの戦争」(ポプラ社)を読みました。
ちいやんと呼ばれる女の子の目を通して
戦時下のつつましい暮らし、肉親を失う悲しみ、否応無しに戦争の災禍に巻き込まれる
人びとがリアルに描かれています。
人だけではありません。戦争などというものには全く無関係な動物たちも、賑わっていた町も、
そこここにあった思い出も、みんな燃えてしまいます。
越水利江子さんは、昨夏の京都で、小澤俊夫さんの講演会の打ち上げでお会いしましたが
ほぼ,私と同じ世代の方なのに、どうやってこのリアルさが描けたのか?
綿密な歴史考証と想像力、どれだけこの物語に入り込んで描かれたかと思うと
私まで胸が苦しくなりました。
ちいやんは、越水さんのお母様がモデルとのこと。
お母様に伝えられたことを、越水さんはどんなに苦しくても
描かずには居られなかったのだと思います。
70年前の戦争で、まったく傷つかなかった家族は、日本に無いのではないでしょうか?
私の母も次兄を満州の戦場で亡くし、画家だった長兄は東京の空襲で大やけどをおいました。
まだ二十歳そこそこの娘が、男手の無い中、真っ黒になって家業の酒屋を手伝ったそうです。
今、また戦争好きな輩が蠢いているような気配がします。
私たち戦争が終わって生まれた世代が、次の世代に向けて
「平和というものは、努力無しでは守れない」という事を
どうやって伝えて行くか?
青い空を見上げても答は書いてないのです。
by pukuminn
| 2018-08-21 18:37
| 好きな本