久しぶりに、「好きな本」の記事を書きます。
2019年の3月、東日本大震災とそれに伴う福島の原発事故をテーマに「もやい展」という展覧会が金沢の21世紀美術館で開催されました。
とても行きたかったのですが、母が病床にあった事もあり遠方へ行くのは断念。
また開催してくれないかしら?と願っていたところ、4月1日から8日、東京の船堀タワーホールで実現、行って来ました。
その会場で出会ったのが鈴木邦弘さんの「いぬとふるさと」の原画です。
金沢展の画像などで興味を持っていたのですが、やはり原画は素晴らしく、引き込まれてしまいました。
1匹の犬と、地味な風情のおじさんがいる風景が淡々と犬の目線で語られて行きます。
そこは福島原発の爆発で無人と化した町。
2013年の秋に、私も浪江町にある希望の牧場を訪問しています。あの短い旅で目にした人気の無い街、元は畑や田圃だったであろう土地を埋め尽くして行く黒いフレコンバッグ……それらがまざまざと甦って来て、再びあの景色の中を歩いているようでした。
人の去った街は、初めて体験するような静粛に包まれ、小鳥の声、風の音、草木のざわめき、とても美しいけれど何かが欠けているような底知れない不安。
鈴木さんは、何度も何度も現地に通われて、描かれたそうです。
光と影のコントラスト、木々の緑、海の青さ、目に飛び込んで来る景色が美しいほど、そこに内包されている哀しみが、心に迫って来ます。
後書きの最後の言葉
「震災前は福島の原発で作られた電気を使い、震災後も福島の太陽光発電で作られた電気を使う首都圏の暮らし。他人事では無く自分事として、僕はずっと考え続けていきたい。」
「いぬとふるさと」 先月旬報社から出版された新刊です。
以下の二冊は鈴木さんの自費出版。運良く「もやい展」の会場で手に入れる事が出来ました。市販本になって、多くの人に読まれますように。
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by pukuminn
| 2021-04-10 16:50
| 好きな本